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簡易裁判所から訴状が届いたら・・・


弁護士の櫻田です。

借金の返済が遅れてしまっていると,簡易裁判所から訴状が送達されることがあります。
訴状送達と併せて,期日呼出状も送付され,簡易裁判所への出頭を求められます。
これを放置して,期日に出頭しないと,判決などの債務名義を取られてしまい,給与差押えなどの強制執行を受ける可能性があります。

そこで,今回は,簡易裁判所から訴状が送達された場合にすべき対応についてご説明します。

なお,貸金業者等の債権者が訴訟を提起する場合,借入時の契約書等で簡易裁判所での管轄の合意がなされているので,借金の金額にかかわらず,簡易裁判所での事件係属になることが多いです。ですので,この記事では,簡易裁判所での対応を想定します(以下,単に「裁判所」と記載します)。

まずは「答弁書」を作成して提出しましょう!


仕事の都合などで呼び出された期日に,裁判所に出頭できないこともあるでしょう。

しかし,期日に出頭できなくても答弁書」訴状に対して,間違っている部分を指摘したり,自分の言い分を述べたりする書面)を作成して,裁判所に提出しておけば,裁判所で答弁書の内容を主張したとみなされます。このことを「擬制陳述」といいます。

なお,この擬制陳述が認められるのは,地方裁判所では第1回目の期日だけですが,簡易裁判所では第2回目以降の期日も対象となります。
つまり,簡易裁判所では,訴えられた側(被告)としては,一度も裁判所に出頭をしなくても,答弁書やその後の準備書面(答弁書の後に債権者の主張に対する反論を述べたりする書面)を作成して提出しておけば,訴訟を進めることができるのです。

したがって,期日に裁判所に出頭できないとしても,まずは,答弁書を作成して,裁判所に提出しておきましょう
こうすることで,訴訟を続行することができ,少なくとも直ちに判決などの債務名義を取られることを回避できます。

逆に,指定された期日までに答弁書を裁判所に提出せず,裁判所にも出張しないと,債権者の主張を争わないものとみなされて,第1回目の期日で訴訟が終結して,債権者の請求通りの判決が言い渡されてしまうことになります。これを「擬制自白」といいます。

判決が出されてしまうと,債権者としては,勤務先や預金口座の情報を把握していれば,給与や預金の差押えなどの強制執行をしてくる可能性があります
特に,給与差押えをされると,給与の一部から強制的に回収されてしまうばかりか,勤務先に借金のことなどが知られてしまうことにもなり,多大な不利益を被ることになります。

分割払いでの和解ができるかを検討しましょう!


正式の登録された貸金業者(債権者)であれば,正当な根拠のない請求をしてくることは考え難く,確実な証拠も備えているでしょうから,反論をしても,その請求が棄却されることはほとんどありません。
債権者の請求が棄却されないということは,分割払い等の和解が成立しない限り,債権者の請求通りの判決が言い渡されてしまうことになります。
債権者の請求通りの判決とは,例えば,「元本100万円とこれに対する15%の利息を一括して支払え」などいうもので,一括払いが原則となります。

しかし,判決が出されると,訴えられた側としては,金額にもよりますが,一括で支払うことができない場合が多いでしょう。一括で支払えるのであれば,訴えられる前に既に支払っているでしょうから。
一括で支払えなければ,給与差押え等の強制執行を受ける可能性があることは上記のとおりです。

そこで,訴えられた側としては,一括払いの判決が出されてしまうのを避けるため,分割払いでの和解ができるかを検討する必要があります。

そして,分割払いの和解を希望するのであれば,原則として,指定された期日に裁判所に出頭をして,裁判所の関与の下,債権者と話合いをする必要があります

期日に裁判所に出頭した場合の流れ


期日に出頭して,法廷で,債権者の請求原因を認め,「支払う意思はあるが,一括では支払うことができないので,分割払いでの和解を希望する」といった趣旨のことを述べると,多くの場合,裁判官は,債権者に対して,和解を勧めてきます(これを「和解勧告」といいます)。

和解勧告がなされると,司法委員(裁判所が選任した非常勤の役職。弁護士が選任されることが多い)に導かれて,債権者と一緒に,別室に移動します。
別室では,司法委員から,「月いくらまでなら支払えるか?」「いつから支払を開始できるか?」などといったことが聞かれます。他方,司法委員は,債権者には,希望する分割金額や支払回数・時期での和解の可否,利息や遅延損害金の免除の可否などを確認します。
こうした協議を経て,分割払いの話合いがまとまったら,再び,法廷に戻って,分割払いの内容の確認がなされ,その場で「裁判上の和解」が成立します。

和解が成立するには,債権者が,こちら側の分割払いの提案に承諾するかどうかにかかってきますが,一般論としては,きちんと出頭して分割払いの希望をすれば,和解がまとまる可能性は高いといえます。
債権者としては,勤務先等の情報を把握していて,判決が出たら強制執行による回収が見込まれる場合が別ですが,そうでなければ,判決をもらっても回収の見込みが立たないので,確実に分割で支払ってもらえる金額で和解をした方が利益になるからです。

和解をしたいが,どうしても出頭できない場合は?


では,和解をしたくても,どうしても,期日に裁判所に出頭ができない場合はどうすればいいでしょうか?

和解に代わる決定

まず,期日に欠席したとしても,裁判所が「和解に代わる決定」をする場合があります。
和解に代わる決定とは,事前に債権者との間で分割払いの合意ができている場合,その旨を記載した書面(答弁書や上申書)を提出していれば,被告が期日に欠席したとしても,裁判官が合意の内容通りの分割払いによる支払を命じる決定のことをいいます。
和解に代わる決定がなされるためには,事前に,債権者に電話などで連絡を取って,分割払いをしたい旨を伝え,その内容を協議し,債権者の合意を得ておく必要があります
また,この場合でも,答弁書を裁判所に提出しておく必要がありますので,注意が必要です。

移送申立て

例えば,北海道に済んでいるのに東京の裁判所から訴状が届いた場合など,管轄の裁判所が遠方にあるために出頭できない場合は,裁判所に「移送申立て」をして管轄の裁判所を変更してもらうお願いをすることも考えられます。
ただし,移送申立ては,病気,介護,育児等のやむを得ない事情により出頭できない場合には認められる可能性がありますが,単に仕事の都合などを理由とする場合には却下されることも多いと思います。簡易裁判所では,第2回目の期日以降も書面提出による擬制陳述が認められますし,後述のとおり,期日変更の申立てをしたり,電話会議の方法を利用したりすることもできるからです。

期日変更申立て

諸事情で期日に出頭できない場合は,事前に裁判所にその旨を説明して,出頭が可能な時期に期日を変更してもらう旨の申立て(期日変更申立て)をすることも考えられます。

電話会議

その他,電話で期日に参加することもできる場合(電話会議)もありますので,やはり,裁判所に相談してみましょう。

そもそも分割払いすらできない場合は?


以上を分割払いができる場合を前提としてきましたが,訴訟提起された債権者のほかにも多額の借金があって,そもそも分割払いすらできない場合はどうすればいいでしょうか?

分割払いの和解は,債権者の合意が得られれば,その合意通りに分割払いをしていくことが前提となります。分割払いができないのに,それができるかのように装って和解をすることはしてはいけません。

訴えられた借金のほかにも借金があって,分割払いの目途が立たなければ,まずは,弁護士に相談をして,債務整理の手続をとることを検討すべきだと思います。

分割払いの和解ができなければ,判決などの債務名義を取られてもやむを得ませんが,自己破産や個人再生の申立てをして,裁判所でこれらの手続の開始決定が出されれば,給与差押え等の強制執行を停止させることも可能です。


今回は以上です。
債権者に勤務先などを知られている場合は,早急に,弁護士に相談することをお勧めします。
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